結成11年目の真実:TWICEと所属事務所JYPが世界に示した「女性アイドルの寿命」を書き換える青写真
twice 事務 所の歴史を振り返ることは、K-POP産業が抱えてきた「使い捨ての構造」との闘争史を読み解くことに等しい。2015年の結成当時、ソウル・江東区に本社を構えるJYPエンターテインメントの台所事情は決して芳しいものではなかった。業績の停滞期を打ち破り、同社を時価総額数千億ウォン規模の怪物へと押し上げた原動力は、間違いなくこの9人の少女たちだった。2026年現在、デビューから10年の節目を越えてなお、彼女たちは日韓のスタジアムを埋め尽くし、所属事務所の売上高において極めて強固な屋台骨であり続けている。「ガールズグループの全盛期は数年」という業界の不文律は、彼女たちの歩みによって完全に解体された。
メガヒットを連発する巨大プロジェクトへと膨らむにつれ、熱狂的なファンベースとtwice 事務 所との関係性は、単なる称賛だけでは済まされない緊張感を常に孕んできた。過密なツアースケジュールによる心身の疲弊、プライベートの切り売りに対する懸念、そして個々のクリエイティブに対する要求。これらが交錯するなかで、双方はどのような力学で契約を更新し、共生関係を保ち続けているのか。業界関係者の証言と公開データをもとに、メガIPをめぐるビジネスの深層を検証する。
第4本部体制の功罪:専属チームがもたらした「個と集団」の最適解
JYPが誇る組織構造「本部制」のなかでも、第4本部は事実上、TWICEのためだけに立ち上げられ、洗練されてきた組織だ。従来の芸能事務所に見られた「全社で一括してスケジュールや制作を管理する」手法を捨て、TWICE専属のマネジメント、広報、制作チームを独立させた。意思決定のスピードは劇的に上がり、カムバックの周期を極限まで短縮した初期の快進撃は、この第4本部の機能美によるものだ。
だが、速度は時に摩耗を生む。連続するワールドツアーと日韓でのアルバムリリース。メンバーが負傷や不安障害によって活動休止を余儀なくされた時期、ファンからの批判の矛先はすべて事務所のマネジメント体制へと向かった。2026年の今振り返れば、あの危機こそが同社のマネジメント哲学を転換させた分岐点だったといえる。完全休養の制度化、メンタルヘルスの徹底ケア、そして個人の意志を尊重したプロモーション配分への移行。痛みを伴う試行錯誤の末に、事務所側が「長く走らせるための持続可能性」へと舵を切った証拠が、現在の安定した稼働状況に表れている。
2度目の契約更新を巡る水面下の力学とクリエイティブ権の行方
2022年の「全員再契約」は業界に激震を与えた。誰一人欠けることなく専属契約を更新した前例は、9人組という大所帯のガールズグループにおいて奇跡に近い。だが、美談の裏には極めて現実的な条件闘争があった。
関係筋によると、2度目の更新に向けた交渉の焦点は、単なる収益配分率の引き上げにとどまらなかった。楽曲制作への関与度、個々のスケジュールに対する拒否権の有無、そしてソロ活動の自由度。20代後半から30代へと差し掛かるメンバーに対し、事務所側はこれまでの「パッケージ化されたK-POPアイドル」の枠組みを外し、アーティストとしての主権を大幅に譲渡した。作詞・作曲のクレジットにメンバーの名が並ぶ頻度が飛躍的に増えた背景には、事務所がトップダウンの統制を諦め、対等なパートナーシップを受け入れた現実がある。
MISAMOからソロへ:事務所が舵を切った「分散型ブランド戦略」
全員が揃ってのグループ活動と並行し、事務所が周到に進めてきたのが「ブランドの分散化」だ。その象徴が日本人メンバー3人によるユニット「MISAMO」の立ち上げであり、ナヨンやジヒョ、ツウィらに見られる段階的なソロデビュー戦略だった。
全員で動けば巨額の動員が見込める一方で、リスクも集中する。JYPはTWICEという母艦を維持しながら、9つの個別ブランドを市場に浸透させる戦略をとった。日本市場においては、MISAMOによるドームツアーの成功がその有効性を証明している。母体となるグループの求心力を一切損なうことなく、派生ユニットが独自のエコシステムを築き上げた。事務所にとって、これはグループ活動の空白期間を埋めるだけでなく、アーティスト個々の自己実現欲求を満たすための極めて合理的な施策だった。
深刻化するプライバシー侵害とAI脅威——法務チームが敷いた防衛線
名声の拡大と引き換えに激しさを増したのは、アーティスト個人の安全を脅かす問題群だ。海外ストーカーの接近事件、空港での過剰な追っかけ行為、そして近年急速に悪質化した生成AIによるディープフェイクや肖像権侵害。これらに対し、事務所の法務部門は従来の後手に回る対応を改めざるを得なくなった。
JYPは告訴状の提出にとどまらず、国内外の法執行機関との直接連携、サイバー監視チームの外注など、セキュリティ投資を大幅に拡充した。かつては「ファンサービスの一環」として曖昧に処理されがちだった空港での無秩序な撮影や出待ちに対しても、厳格な法的処置を辞さない姿勢を鮮明にしている。守るべきは商品としての価値だけではない。所属タレントの精神的平穏を担保できなければ、事業の継続自体が危うくなるというシビアな現実認識がそこにある。
財務諸表が語る依存度:次世代が台頭するなかでの絶対的存在感
JYPエンターテインメントのIR資料を精査すると、同社がいかにTWICEという巨大なキャッシュカウに依存してきたか、そしてそこからの脱却をどう試みてきたかが浮き彫りになる。Stray Kidsの世界的台頭や後続グループの成長があったとしても、安定したフィジカルアルバムのセールス、グッズの単価、そして何より日本を中心とするスタジアム公演の利益率において、彼女たちの右に出る存在は依然として稀だ。
単発のバズではなく、10年かけて醸成されたファンダム「ONCE」の購買力は、為替変動や市場のトレンドに左右されにくい。事務所にとって彼女たちは、新規事業や若手育成のリスクをヘッジするための最も強固な防壁なのだ。次世代への世代交代を急ぎつつも、この稼ぎ頭との契約関係を何としても維持したいという経営陣の思惑が、破格の待遇維持という結果に直結している。
「消耗品」から「共生体」へ:K-POPビジネスの新しい標本
芸能事務所とアイドルの関係は、長らく搾取と反発の歴史だった。契約期間が切れれば泥沼の法廷闘争が勃発し、グループは空中分解する。それがこれまでのK-POP界の典型的なシナリオだった。しかし、TWICEとJYPが構築した関係性は、そうした旧来の力学を過去のものにしつつある。
事務所は巨大なインフラと世界的な流通ネットワークを提供し、メンバーは確固たる実力と連帯感をもってそれに応える。双方が互いの経済的・象徴的価値を正確に理解しているからこそ、過度な束縛も、無秩序な暴走も起きない。K-POPが真の持続可能性を獲得できるのか否か。その試金石として、このグループと事務所が歩む2026年以降の道筋に、世界中のエンターテインメント業界が冷徹な視線を注ぎ続けている。 (出典: twice 事務 所(Yahoo!ニュース))